寝る前に「心魂」を終わらせたい
なおここで言う「心魂」とはとある魂の精神の話であり、松乃の話である
とある魂とは生前の守信のことであり、松乃は彼の精神、理性のみを引き継いでいる
色彩の松乃はこれを自覚しておらず、反対に芦雪は全てを知っている状態
#天涯秘隣
なおここで言う「心魂」とはとある魂の精神の話であり、松乃の話である
とある魂とは生前の守信のことであり、松乃は彼の精神、理性のみを引き継いでいる
色彩の松乃はこれを自覚しておらず、反対に芦雪は全てを知っている状態
#天涯秘隣
住吉派の本は狩野派と比べるとあまりに少ないので、見つけたら買うようにしないとな、と思って今日トーハクで買ってしまった
住吉派はその名からわかる通り、藤仁や松乃ら住吉兄妹と関わりが深すぎる大元になっているので
天涯の文中にも小出しにしているけれど、このあたり早く本編で触れたいよ~~
#天涯秘隣
住吉派はその名からわかる通り、藤仁や松乃ら住吉兄妹と関わりが深すぎる大元になっているので
天涯の文中にも小出しにしているけれど、このあたり早く本編で触れたいよ~~
#天涯秘隣
また思い出したので書いておこう
第七筆「切願」で藤仁を逆ナンしたと思われている女の子、実は藤仁ではなく芦雪とお茶がしたかったんだよ
なのに芦雪は特有のキレのある推測と思い込みで「藤仁に惚れたんだなやれやれそれも当然だが」て全くそんなこと思いもしてなかったよ
思い込みフィルターかかりすぎ!
#天涯秘隣
第七筆「切願」で藤仁を逆ナンしたと思われている女の子、実は藤仁ではなく芦雪とお茶がしたかったんだよ
なのに芦雪は特有のキレのある推測と思い込みで「藤仁に惚れたんだなやれやれそれも当然だが」て全くそんなこと思いもしてなかったよ
思い込みフィルターかかりすぎ!
#天涯秘隣
そういえばどこにも言ってなかった気がするのでここで書いておくのだけど、第六筆の芦雪の回想中に出てきた藤仁が夕餉を食べに居間に来た理由、芦雪の声掛けに応じたのではなく、彼の仕掛けた悪戯の中に入ってた「今日の夕餉は蕪漬け」という貼り紙に心が動いたからだったりする
藤仁は蕪漬けが好物なので
子どもか???
#天涯秘隣
藤仁は蕪漬けが好物なので
子どもか???
#天涯秘隣
普段着の下に履くえっちな下着と、こてこて王道のバニー服を芦雪くんから「どっちが良い?」て差し出されて、苦渋の選択ののちに普段着+えっちな下着を指さす藤仁
今日はバニーの日でありぱんつの日か……
全部芦雪くんの仕事だな……
全部芦雪くんの仕事だな……
「今日しよ?」て言う芦雪くんに藤仁は「(したいのは山々だが、いやでも3日前はたいそう無理をさせたしそのせいで寝込んでたのも知ってるしそうなるって分かっててもしようと言うのなら)しよう」って0.5秒ぐらいの間に考えて言ってるかもしれない
芦雪くんの身体を思って断る日ももちろんある
さすがにね、中にしてしまった後日とかは数日以上空けないと……とは思っている藤仁も……ゴムがない江戸時代大変……
芦雪くんの身体を思って断る日ももちろんある
さすがにね、中にしてしまった後日とかは数日以上空けないと……とは思っている藤仁も……ゴムがない江戸時代大変……
だだっ子芦雪くんが見たいって駄々こねてる(?)
順番と組み合わせが悩ましい
⬛︎第1弾 藤仁&芦雪
⬛︎第2弾 写楽&守信
⬛︎第3弾 行成&幸之介
⬛︎第4弾 采梅&松乃
⬛︎第1弾 藤仁&芦雪
⬛︎第2弾 写楽&守信
⬛︎第3弾 行成&幸之介
⬛︎第4弾 采梅&松乃
藤仁は芦雪くんにしてもらう膝枕も好きだし腕枕も好きだけど、添い寝がいちばん好き
芦雪くんの香りに包まれて眠るのが好きらしい
芦雪くんの香りに包まれて眠るのが好きらしい
暑いよ~~って縁側で大の字になってじたばたする芦雪くんを見た藤仁、やれやれとため息をついて芦雪くんに膝枕をし、そっとうちわで扇いで風を送ってあげる
「ん~……。きもちいー……」
「そうか」
「あとで俺も扇いでやるな。部屋で添い寝と膝枕、どっちが良い?」
「……添い寝」
て言い合う藤芦どこ????(真夏の幻覚)
「ん~……。きもちいー……」
「そうか」
「あとで俺も扇いでやるな。部屋で添い寝と膝枕、どっちが良い?」
「……添い寝」
て言い合う藤芦どこ????(真夏の幻覚)
暑ーい夏に、縁側ですいかを食べる藤芦
暑い~って縁側で大の字になってる芦雪くんのもとに藤仁が皮付きの半月すいかを持ってきて、「これで我慢しろ」って言って差し出す
芦雪くんは満面の笑顔ですいかを受け取って「んふふ。うまーい。砂糖つけてくれたんだな。ありがと!」て言って藤仁は藤仁で無言のまま芦雪くんの隣に座って一緒にすいかを食べる
芦雪くんは皮だけになったすいかを置いてそのまま縁側で寝てしまうんだけど、藤仁は皮だけのすいかをふたつ並べて芦雪の寝顔と一緒に写生するんだろネタは上がってんだ
写生のそばには「夏 芦雪とすいか」ってタイトルがちいさく書かれているねきっとね
暑い~って縁側で大の字になってる芦雪くんのもとに藤仁が皮付きの半月すいかを持ってきて、「これで我慢しろ」って言って差し出す
芦雪くんは満面の笑顔ですいかを受け取って「んふふ。うまーい。砂糖つけてくれたんだな。ありがと!」て言って藤仁は藤仁で無言のまま芦雪くんの隣に座って一緒にすいかを食べる
芦雪くんは皮だけになったすいかを置いてそのまま縁側で寝てしまうんだけど、藤仁は皮だけのすいかをふたつ並べて芦雪の寝顔と一緒に写生するんだろネタは上がってんだ
写生のそばには「夏 芦雪とすいか」ってタイトルがちいさく書かれているねきっとね
これはイメージの問題なんだけど、藤仁と守信のイメージ楽曲て和ロックなんだろうなと勝手に思っている
常に生き急いでいて己の信念と欲を追求する2人なので
常に生き急いでいて己の信念と欲を追求する2人なので
千瀬くん、脳内で喋ってる時は村瀬歩畳むの声なんだよなぁ……
なんかこの子だけ声の解像度が異常
なんかこの子だけ声の解像度が異常
四魂図鑑、天涯の作中の誰に描かせたていにするか問題
全ての四魂と通じる松乃にさせても良いなと思ったけど、四魂大好きなのに四魂が見えない松乃の許嫁・千瀬くんに描いてもらえば良いじゃーん!てなっている
千瀬くんが登場するのは3巻だから、3巻のあとに発行できれば……
松乃から聞いた四魂の話をせっせと書き溜めてれば可愛い
千瀬くんのメモ書きの横に松乃ちゃんが「これは○○ですよ」てつっこんでたり、それに「うるさいな」て返してる千瀬くんのやり取り見たいな見たいな
あまりに現代的だが……そもそも彼らが綴っている文字を可読性のために現代風に置き換えて良いのかという問題もある……まァこの辺は追々……
全ての四魂と通じる松乃にさせても良いなと思ったけど、四魂大好きなのに四魂が見えない松乃の許嫁・千瀬くんに描いてもらえば良いじゃーん!てなっている
千瀬くんが登場するのは3巻だから、3巻のあとに発行できれば……
松乃から聞いた四魂の話をせっせと書き溜めてれば可愛い
千瀬くんのメモ書きの横に松乃ちゃんが「これは○○ですよ」てつっこんでたり、それに「うるさいな」て返してる千瀬くんのやり取り見たいな見たいな
あまりに現代的だが……そもそも彼らが綴っている文字を可読性のために現代風に置き換えて良いのかという問題もある……まァこの辺は追々……
いずれやりたいことメモ
・絵師ごとの四魂図鑑の作成
なんかの特典とかに小さい冊子でやりたい
絵師ごとに筆致変えたりとかできたら楽しいな私が
・絵師ごとの四魂図鑑の作成
なんかの特典とかに小さい冊子でやりたい
絵師ごとに筆致変えたりとかできたら楽しいな私が
暫定
迷い
ボツかも
声よりも、雄弁なまなざし。
迷い
幸せは、君のかたちをしている。
ボツかも
秘めたるは、あふれる想い。
「もう一回しよ?」て藤仁に言う本編芦雪くんにごめんなさいたすけてくださいゆるしてになってる(?)
「俺のこと、早くめちゃくちゃにして?」って芦雪くんに言われて理性をめちゃくちゃにされる藤仁最高すぎる
もりちは……もりちは良いです、遠慮します
多分彼は何者とも仲良くなれないおじいちゃん
多分彼は何者とも仲良くなれないおじいちゃん
天涯でいちばん誰と相性が良いか、私は友達になるなら幸之介が良いし妹にするなら松乃が良いし推しにするなら芦雪くんが良いし相談するなら行成が良いしたまに飲みに行く相手なら藤仁が良い
何の話?
何の話?
文披31題_Day6「重ねる」
雪希と初めて触れ合ったのはいつだったろうか。絵中に意識を沈ませたまま、紫苑はふと、そんなことを考えた。
──紫苑兄さんの手、おっきいね。
──そうか? 俺は生まれた時からこの大きさだからわからんが……。
──いいなぁ。ぼくも早く大きくなりたいなぁ。
ランドセルと言うらしい、彼の身体には大きすぎる荷物を椅子に放って、雪希は鏡合わせのように紫苑と手を重ねた。その時見た、彼の羨ましげな顔が忘れられない。
(そうだ、それから雪希が誕生日を迎えるたびに手を重ねたがったから……。初めて触れたのは七つの頃……)
あれから十数年が経ち、雪希が手を重ねたいとねだることはなくなった。精神が成熟した表れか、はたまた紫苑との触れ合いに意味を見出さなくなったのか。
(今年の雪希の誕生日に、俺から触れたいと言えば……あの子はどんな顔をするだろう……)
理由があれば触れられる。でももし、理由もなく触れたいと願ったら。
愛し子の未来を想像しながら、紫苑はふたたびまどろみに身をゆだねた。
畳む
#文披31題
#花の産土
雪希と初めて触れ合ったのはいつだったろうか。絵中に意識を沈ませたまま、紫苑はふと、そんなことを考えた。
──紫苑兄さんの手、おっきいね。
──そうか? 俺は生まれた時からこの大きさだからわからんが……。
──いいなぁ。ぼくも早く大きくなりたいなぁ。
ランドセルと言うらしい、彼の身体には大きすぎる荷物を椅子に放って、雪希は鏡合わせのように紫苑と手を重ねた。その時見た、彼の羨ましげな顔が忘れられない。
(そうだ、それから雪希が誕生日を迎えるたびに手を重ねたがったから……。初めて触れたのは七つの頃……)
あれから十数年が経ち、雪希が手を重ねたいとねだることはなくなった。精神が成熟した表れか、はたまた紫苑との触れ合いに意味を見出さなくなったのか。
(今年の雪希の誕生日に、俺から触れたいと言えば……あの子はどんな顔をするだろう……)
理由があれば触れられる。でももし、理由もなく触れたいと願ったら。
愛し子の未来を想像しながら、紫苑はふたたびまどろみに身をゆだねた。
畳む
#文披31題
#花の産土
快楽にアグレッシブな受け、芦雪くんが最高なんだな~~
藤仁の癇癪と甘えたがりが芦雪くんの性質に良くも悪くも噛み合っちゃった結果が藤芦ってわけ
藤仁の癇癪と甘えたがりが芦雪くんの性質に良くも悪くも噛み合っちゃった結果が藤芦ってわけ
藤仁は芦雪に抱かれたいと思うのかというと「芦雪に触れられるなら」という理由で簡単に受け入れそうではある
つまり「抱かれたい」とは思っていない可能性が高い
芦雪くんも「抱きたい」というより「自分が気持ちよくなるまでめちゃくちゃにして欲しい」が先行しているし「藤仁の可愛い顔が見れるなら抱くのもあり」ぐらいのきもちなんじゃないでしょうか
何の話?
つまり「抱かれたい」とは思っていない可能性が高い
芦雪くんも「抱きたい」というより「自分が気持ちよくなるまでめちゃくちゃにして欲しい」が先行しているし「藤仁の可愛い顔が見れるなら抱くのもあり」ぐらいのきもちなんじゃないでしょうか
何の話?
文披31題_Day5「三日月」
蝉時雨がやみ、外は人の気配が薄れ始めている。
夏の空気が色濃くなろうとも、どの季節も夜になれば静かだ。他と違うことと言えば、宵が短くなったおかげで同居人の寝顔を見る時間が減ったことぐらいだろう。
(雪希の寝顔、見るのは好きなんだけどな。小さい頃から寝顔だけは変わらなくて可愛いんだ。……本人には言わないけど)
かつて絵の前で舟を漕いでいた幼子を思い出し、紫苑はひそやかに声をこぼした。
「はー。風呂暑かったー」
噂をすればなんとやら。乱雑にバスタオルを被った同居人──雪希が部屋に戻ってきた。
彼は身体の線が見えぬゆったりとした服装に着替えているが、髪を丁寧に拭っていないせいか、服には水滴が落ちた跡がある。これでは着替えた意味がない。
「こら。まーた髪濡らしたまま歩いてんな。……こっち来い。拭いてやるから」
紫苑は雪希を招き寄せると、彼を自身の前に座らせた。
「お願いしまーす」と間延びした依頼が跳ねる。素直に背を向けた男を前にして、紫苑はため息をつきながら彼の頭をバスタオルで包んだ。
「今日は三日月なんだねぇ……。誰かの爪痕みたい」
窓から見える白き清光に、雪希はぽつりと呟いた。
「そういやお前、小さい頃は三日月のことを『月が笑ってる』なんて言ってたな」
「よく覚えてるね、そんなこと」
「そりゃあな。……忘れないよ」
「どうして?」
髪を拭う手が止まる。紫苑は口を噤んだ。
ほんの少し波打つ髪の癖も、幼き頃から変わらない。こうして気兼ねなく紫苑に甘えてくるところも、真摯に問いかけてくるところも。
それに安堵してはいても、恐れもまた日々増えていく。月を見て思うことが変わるように、彼はどうしたって変わる。変わっていく。年齢も、身体付きも、考え方でさえ。
雪希にとっての過去は、紫苑にとっては昨日のことだ。昨日のことを忘れるはずがない。紫苑のその当たり前が、雪希には当たり前ではない。
人間は怪画ではない。不変なる存在ではないのだと、雪希の幼き頃の話をするたび、まざまざと現実を突きつけられる。怪画と人間の差を。
「それは……話せる人間なんて、身近な人間じゃ雪希ぐらいだし……。覚えてて当然だろ」
半ば己に言い聞かせるような答えだった。紫苑は再び雪希の髪を拭い始めた。
「そこは『雪希の言葉だから』って言ってくれたらもっと最高だったなー」
「なに言ってんだ。……ほら終わり! 髪乾かして来い」
「んふふ。ありがと」
雪希はおどけながら部屋を出ていった。
髪を乾かす風の音が遠く聞こえる。紫苑はぼんやりと窓を見た。
「……月が笑ってる」
爪痕には見えない。紫苑はひとり、ただ月を眺めていた。
畳む
#文披31題
#花の産土
蝉時雨がやみ、外は人の気配が薄れ始めている。
夏の空気が色濃くなろうとも、どの季節も夜になれば静かだ。他と違うことと言えば、宵が短くなったおかげで同居人の寝顔を見る時間が減ったことぐらいだろう。
(雪希の寝顔、見るのは好きなんだけどな。小さい頃から寝顔だけは変わらなくて可愛いんだ。……本人には言わないけど)
かつて絵の前で舟を漕いでいた幼子を思い出し、紫苑はひそやかに声をこぼした。
「はー。風呂暑かったー」
噂をすればなんとやら。乱雑にバスタオルを被った同居人──雪希が部屋に戻ってきた。
彼は身体の線が見えぬゆったりとした服装に着替えているが、髪を丁寧に拭っていないせいか、服には水滴が落ちた跡がある。これでは着替えた意味がない。
「こら。まーた髪濡らしたまま歩いてんな。……こっち来い。拭いてやるから」
紫苑は雪希を招き寄せると、彼を自身の前に座らせた。
「お願いしまーす」と間延びした依頼が跳ねる。素直に背を向けた男を前にして、紫苑はため息をつきながら彼の頭をバスタオルで包んだ。
「今日は三日月なんだねぇ……。誰かの爪痕みたい」
窓から見える白き清光に、雪希はぽつりと呟いた。
「そういやお前、小さい頃は三日月のことを『月が笑ってる』なんて言ってたな」
「よく覚えてるね、そんなこと」
「そりゃあな。……忘れないよ」
「どうして?」
髪を拭う手が止まる。紫苑は口を噤んだ。
ほんの少し波打つ髪の癖も、幼き頃から変わらない。こうして気兼ねなく紫苑に甘えてくるところも、真摯に問いかけてくるところも。
それに安堵してはいても、恐れもまた日々増えていく。月を見て思うことが変わるように、彼はどうしたって変わる。変わっていく。年齢も、身体付きも、考え方でさえ。
雪希にとっての過去は、紫苑にとっては昨日のことだ。昨日のことを忘れるはずがない。紫苑のその当たり前が、雪希には当たり前ではない。
人間は怪画ではない。不変なる存在ではないのだと、雪希の幼き頃の話をするたび、まざまざと現実を突きつけられる。怪画と人間の差を。
「それは……話せる人間なんて、身近な人間じゃ雪希ぐらいだし……。覚えてて当然だろ」
半ば己に言い聞かせるような答えだった。紫苑は再び雪希の髪を拭い始めた。
「そこは『雪希の言葉だから』って言ってくれたらもっと最高だったなー」
「なに言ってんだ。……ほら終わり! 髪乾かして来い」
「んふふ。ありがと」
雪希はおどけながら部屋を出ていった。
髪を乾かす風の音が遠く聞こえる。紫苑はぼんやりと窓を見た。
「……月が笑ってる」
爪痕には見えない。紫苑はひとり、ただ月を眺めていた。
畳む
#文披31題
#花の産土
文披31題_Day4「口ずさむ」
初秋の月が、江戸の清夜を照らしている。
今宵の月はひときわ大きく見える。藤仁は縁側に腰掛け、夜空に向かって手を伸ばした。
「届くわけない、か……」
今なら月すら手に入れられるような気がしたのだ。焦がれ続けた彼と恋仲になれた今なら、と。
(酒の飲みすぎだな……)
酒ばかりのせいではない。要は浮かれているのである。彼──芦雪と想いが通じた事実に。
藤仁は手にした猪口をひと息に煽ると、再び空を見上げた。
「我が背子と 二人し居れば山高み……」
「里には月は 照らずともよし!」
口ずさんだ古歌が継がれる。藤仁は思わず振り返った。
「芦雪……」
「まったくもー。飲むなら誘えよ、つれないヤツだなぁ」
薄闇から現れたのは芦雪だった。彼は手にした徳利を縁側に置くと、藤仁の隣に腰を下ろした。
「月の光は山に遮られてないし、酒もあるのに。……俺がいなくて寂しかった?」
清光に照らされ、芦雪の悪戯な笑みが闇夜に浮かぶ。
「……さてな」
藤仁は猪口を傾け、酒を口に含んだ。
──君といれば、月はなくとも構わない。
かつてはそう思っていた。友との絆を歌った歌人のように。されど今は。
(そうだよ。月があっても、君がいなければつまらない)
本音を古歌に隠したまま、藤仁は唇をゆるめた。
畳む
#文披31題
#天涯比隣
初秋の月が、江戸の清夜を照らしている。
今宵の月はひときわ大きく見える。藤仁は縁側に腰掛け、夜空に向かって手を伸ばした。
「届くわけない、か……」
今なら月すら手に入れられるような気がしたのだ。焦がれ続けた彼と恋仲になれた今なら、と。
(酒の飲みすぎだな……)
酒ばかりのせいではない。要は浮かれているのである。彼──芦雪と想いが通じた事実に。
藤仁は手にした猪口をひと息に煽ると、再び空を見上げた。
「我が背子と 二人し居れば山高み……」
「里には月は 照らずともよし!」
口ずさんだ古歌が継がれる。藤仁は思わず振り返った。
「芦雪……」
「まったくもー。飲むなら誘えよ、つれないヤツだなぁ」
薄闇から現れたのは芦雪だった。彼は手にした徳利を縁側に置くと、藤仁の隣に腰を下ろした。
「月の光は山に遮られてないし、酒もあるのに。……俺がいなくて寂しかった?」
清光に照らされ、芦雪の悪戯な笑みが闇夜に浮かぶ。
「……さてな」
藤仁は猪口を傾け、酒を口に含んだ。
──君といれば、月はなくとも構わない。
かつてはそう思っていた。友との絆を歌った歌人のように。されど今は。
(そうだよ。月があっても、君がいなければつまらない)
本音を古歌に隠したまま、藤仁は唇をゆるめた。
畳む
#文披31題
#天涯比隣
文披31題_Day3「鏡」
──まるで鏡合わせのようではないか。
紫苑はふと、かつての怪画の言葉を思い出した。
どうやら自分は似ているらしい。主が焦がれてやまなかった男に。
似ていて当然である。紫苑は彼の姿を写して生み出されたのだから。
紫苑は、自身の源流となった男に会ったことはない。会えていたならば、そもそも紫苑は生み出されていなかっただろう。会えなくなったがゆえに、紫苑は主の支えとして生まれたのだ。
けれど主は、紫苑を描いてからより不安定になったと聞いている。
喪った心の半分を埋めるように。二度と叶わぬ夢をみるように。主は怪画である紫苑にすがりついて、何度も抱擁をねだった。
紫苑が優しく抱きしめるたび、求められる姿を演じるたび、彼は泣いていた。淡墨の瞳がとけてしまうのではないかと不安に思ってしまうほど。
(主は……俺を描いて幸せだったのか……?)
窓に触れる。ガラスは夜を透かしているのに、紫苑の輪郭だけは忠実に映し出している。この世に生まれた意味を果たせず、今ものうのうと息をしている紫苑をなじるように。
ガラスの中の己を指でなぞる。自身の容貌を見るたび込み上げるのは、無力感だけだ。
主の望みを本当の意味で叶えてやれなかった。姿だけでは、彼の傷を癒せなかった。恋仲の男なら、主の頬を簡単に緩ませられたのだろうか。
ガラスに映る己が、不格好に口端を上げた。
「俺が笑ってどうする……」
ため息をついた時、肩口にかすかなぬくもりが降り立った。
「いい笑顔だねぇ」
「うわっ! びっくりした! 急に背後に立つなよ……」
「カーテン閉めたかったんだから仕方ないだろ。紫苑こそひとりで笑ってどうしたのさ。めずらしい」
雪希は紫苑の両肩を軽く叩くと、腕を伸ばしてカーテンを引いた。
「……俺、普段からそんなに笑ってない?」
「んー。あんまり?」
窓がカーテンに覆われ、もうひとりの紫苑が隠れる。自身が今しがたまでどのような顔をしていたのか、すでに思い出せなくなっていた。
「まぁ、だからかな。紫苑を笑わせられた時はすっごい嬉しいんだよね。つられて僕まで笑っちゃう」
「そういうもんなのか?」
「そういうもんだと思うけど」
紫苑は小首を傾げた。人間に生み出された存在でありながら、人間というものは未だによく分からない。何故、怪画である己が笑えば、雪希も笑うことになるのだろう。
紫苑が腑に落ちていないであろうことを察したのか、雪希は紫苑の両頬を手で包みながら続けた。
「人って鏡なんだよ。自分が笑うと笑い返してくれるし、悲しい顔をしてると悲しみが移ってしまう」
固まった頬が、雪希の手でほぐされていく。強ばりが徐々にほどけ、ほのかに熱を持つ。雪希は満足げに唇をゆるめた。
「だから、君の前では笑顔でいるんだ。僕は紫苑の笑った顔が好きだから」
雪華がほころぶように、男の眦が蕩けていく。
あるはずのない鼓動がやわく、ちいさく跳ねた。
(その気持ちは……何となくわかる気がする……)
ただ主が笑ってくれたら、それだけで良かった。けれどそれを願えば願うほど、泣かせてしまうばかりだった。
──主とまた言葉を交わせるなら、その時は。
そんなことを今さら願っても、もう彼とは会えないのだけれど。
畳む
#文披31題
#花の産土
──まるで鏡合わせのようではないか。
紫苑はふと、かつての怪画の言葉を思い出した。
どうやら自分は似ているらしい。主が焦がれてやまなかった男に。
似ていて当然である。紫苑は彼の姿を写して生み出されたのだから。
紫苑は、自身の源流となった男に会ったことはない。会えていたならば、そもそも紫苑は生み出されていなかっただろう。会えなくなったがゆえに、紫苑は主の支えとして生まれたのだ。
けれど主は、紫苑を描いてからより不安定になったと聞いている。
喪った心の半分を埋めるように。二度と叶わぬ夢をみるように。主は怪画である紫苑にすがりついて、何度も抱擁をねだった。
紫苑が優しく抱きしめるたび、求められる姿を演じるたび、彼は泣いていた。淡墨の瞳がとけてしまうのではないかと不安に思ってしまうほど。
(主は……俺を描いて幸せだったのか……?)
窓に触れる。ガラスは夜を透かしているのに、紫苑の輪郭だけは忠実に映し出している。この世に生まれた意味を果たせず、今ものうのうと息をしている紫苑をなじるように。
ガラスの中の己を指でなぞる。自身の容貌を見るたび込み上げるのは、無力感だけだ。
主の望みを本当の意味で叶えてやれなかった。姿だけでは、彼の傷を癒せなかった。恋仲の男なら、主の頬を簡単に緩ませられたのだろうか。
ガラスに映る己が、不格好に口端を上げた。
「俺が笑ってどうする……」
ため息をついた時、肩口にかすかなぬくもりが降り立った。
「いい笑顔だねぇ」
「うわっ! びっくりした! 急に背後に立つなよ……」
「カーテン閉めたかったんだから仕方ないだろ。紫苑こそひとりで笑ってどうしたのさ。めずらしい」
雪希は紫苑の両肩を軽く叩くと、腕を伸ばしてカーテンを引いた。
「……俺、普段からそんなに笑ってない?」
「んー。あんまり?」
窓がカーテンに覆われ、もうひとりの紫苑が隠れる。自身が今しがたまでどのような顔をしていたのか、すでに思い出せなくなっていた。
「まぁ、だからかな。紫苑を笑わせられた時はすっごい嬉しいんだよね。つられて僕まで笑っちゃう」
「そういうもんなのか?」
「そういうもんだと思うけど」
紫苑は小首を傾げた。人間に生み出された存在でありながら、人間というものは未だによく分からない。何故、怪画である己が笑えば、雪希も笑うことになるのだろう。
紫苑が腑に落ちていないであろうことを察したのか、雪希は紫苑の両頬を手で包みながら続けた。
「人って鏡なんだよ。自分が笑うと笑い返してくれるし、悲しい顔をしてると悲しみが移ってしまう」
固まった頬が、雪希の手でほぐされていく。強ばりが徐々にほどけ、ほのかに熱を持つ。雪希は満足げに唇をゆるめた。
「だから、君の前では笑顔でいるんだ。僕は紫苑の笑った顔が好きだから」
雪華がほころぶように、男の眦が蕩けていく。
あるはずのない鼓動がやわく、ちいさく跳ねた。
(その気持ちは……何となくわかる気がする……)
ただ主が笑ってくれたら、それだけで良かった。けれどそれを願えば願うほど、泣かせてしまうばかりだった。
──主とまた言葉を交わせるなら、その時は。
そんなことを今さら願っても、もう彼とは会えないのだけれど。
畳む
#文披31題
#花の産土
芦雪くんは紫苑を描きながら謝ってたけど、それは紫苑に向けてだったのか、藤仁に向けてだったのかはわからないねぇ……
文披31題_Day2「風鈴」
清廉な一音が鳴る。ちいさく、かすかに空気が揺れる。
「この音……」
不思議と暑さがやわらぐ。床に胡座をかいたまま、紫苑は大きな窓を見上げた。
「あぁ、これ? 風鈴だよ。そろそろ暑くなってきたからねぇ。先に耳だけでも涼しくなろうかと思って」
紫苑と生活をともにする青年が、窓の上端にまるいガラスを括りつける。彼の白い指が小石のようなものに触れて、再び音が落ちた。
音の軌跡を追う。それは窓向こうの抜けるような青にとけ、やがて消えていった。
「紫苑ってさ、風鈴見たことある?」
青年が問う。紫苑は首を傾げた。
「ある。これみたいに、風のかたちを音にするやつだろ?」
「お! おもしろいこと言うね」
やっぱり怪画ならではの感覚なのかなぁ、と青年は感心したように笑って、紫苑の隣に胡座をかいた。
彼のほころんだ表情に、何故だか心が跳ねる。紫苑は胸を張りながら口を開いた。
「主が癇癪を起こして泣いてた時によく聞かせてたよ。そしたら主も不思議と落ち着いてさ。そのまま俺の膝でぐっすり」
「主って、君を描いた絵師のこと?」
「そうだ」
「ふーん……」
青年はわずかに目を眇めた。それから音もなく紫苑の膝に視線を注ぐ。
「雪希?」
青年の──雪希の顔が上がる。彼は淡墨の瞳を輝かせながら言った。
「ねー。仕事で嫌なことがあった日なら、僕も君の膝で寝ても良い?」
「なーに言ってんだ。お前は癇癪起こすような子どもじゃないだろ」
「子どもだもーん」
「あっ、こいつ」
懐かしい重さだった。膝上に雪希の頭が乗り、ぬくもりが伝わる。暑さを厭うていたばかりなのに、不思議と嫌ではなかった。
雪希のやわらかな髪が頬をすべって、彼の顔を隠していく。過去の面影と重なったように見えて、思わずどきりとした。
「……どうした。仕事とやらが嫌いか?」
「ううん、嫌いじゃないよ。まれに君みたいな怪画とも会えるしね。学芸員の特権には感謝してる」
雪希は歌うように言った。嘘をついている様子はない。無理をしている気配もまた。
紫苑は雪希の髪間に手を差し入れ、そっと頭の輪郭をたどった。
「うーん……。紫苑の膝枕、寝心地はそんなに良くないかも」
「文句言うなら降りろ」
「やだ。もっと頭なでて」
ちりん、と風の軌跡が鳴る。かつてあった泣き声は聞こえない。
ただ、楽しそうに跳ねる笑い声だけが、風鈴の音に混じっている。
畳む
#文披31題
#花の産土
清廉な一音が鳴る。ちいさく、かすかに空気が揺れる。
「この音……」
不思議と暑さがやわらぐ。床に胡座をかいたまま、紫苑は大きな窓を見上げた。
「あぁ、これ? 風鈴だよ。そろそろ暑くなってきたからねぇ。先に耳だけでも涼しくなろうかと思って」
紫苑と生活をともにする青年が、窓の上端にまるいガラスを括りつける。彼の白い指が小石のようなものに触れて、再び音が落ちた。
音の軌跡を追う。それは窓向こうの抜けるような青にとけ、やがて消えていった。
「紫苑ってさ、風鈴見たことある?」
青年が問う。紫苑は首を傾げた。
「ある。これみたいに、風のかたちを音にするやつだろ?」
「お! おもしろいこと言うね」
やっぱり怪画ならではの感覚なのかなぁ、と青年は感心したように笑って、紫苑の隣に胡座をかいた。
彼のほころんだ表情に、何故だか心が跳ねる。紫苑は胸を張りながら口を開いた。
「主が癇癪を起こして泣いてた時によく聞かせてたよ。そしたら主も不思議と落ち着いてさ。そのまま俺の膝でぐっすり」
「主って、君を描いた絵師のこと?」
「そうだ」
「ふーん……」
青年はわずかに目を眇めた。それから音もなく紫苑の膝に視線を注ぐ。
「雪希?」
青年の──雪希の顔が上がる。彼は淡墨の瞳を輝かせながら言った。
「ねー。仕事で嫌なことがあった日なら、僕も君の膝で寝ても良い?」
「なーに言ってんだ。お前は癇癪起こすような子どもじゃないだろ」
「子どもだもーん」
「あっ、こいつ」
懐かしい重さだった。膝上に雪希の頭が乗り、ぬくもりが伝わる。暑さを厭うていたばかりなのに、不思議と嫌ではなかった。
雪希のやわらかな髪が頬をすべって、彼の顔を隠していく。過去の面影と重なったように見えて、思わずどきりとした。
「……どうした。仕事とやらが嫌いか?」
「ううん、嫌いじゃないよ。まれに君みたいな怪画とも会えるしね。学芸員の特権には感謝してる」
雪希は歌うように言った。嘘をついている様子はない。無理をしている気配もまた。
紫苑は雪希の髪間に手を差し入れ、そっと頭の輪郭をたどった。
「うーん……。紫苑の膝枕、寝心地はそんなに良くないかも」
「文句言うなら降りろ」
「やだ。もっと頭なでて」
ちりん、と風の軌跡が鳴る。かつてあった泣き声は聞こえない。
ただ、楽しそうに跳ねる笑い声だけが、風鈴の音に混じっている。
畳む
#文披31題
#花の産土
作者はもちろん鈴木其一、プライスコレクションの優品のひとつ
プライスさんは琳派コレクターとしても国内外ともに大変有名な方で、お会いしたことは無いけれど大学時代のゼミの教授が友人だったらしくよく話を伺っていた
国内では目にも留められなかった其一を海外で発信して有名にしてくれた方ですありがたい
輪郭線を用いず色彩の付立技法のみで描かれているがゆえに瑞々しさと動的効果があり、なのにシルエットとして独立していて絵の中でキャラクター化できている
鈴木其一の作品の中でも1、2を争うくらい好きなもの
元ネタよく聞かれるのを今急に思い出したのでここでメモしておこう