つゆり映え

- 妖怪が文字を並べてる自室 -
美術館と現代版藤芦

藤仁がまだ小さい頃、父・綾信はよく藤仁を連れて美術館に行っていたことがある。
「この絵はここの表現が面白くてな」「藤仁はどれが良いと思う? 父さんはね」などと理解できていない藤仁相手に好き勝手語る綾信だったが、当の藤仁はそんな父の姿が好きだった。
ある日、例に倣って連れられて来た展覧会で、藤仁はとても大きな朝顔の屏風絵を見つける。綺麗だなぁ、と見入っているうちに父とはぐれてしまい、必死に姿を探すもどこにもおらず。
どうしよう……と小さな手をきゅっと握りしめて泣きそうになっていた時、同じく迷子(こちらはかなり前向きな迷子)の芦雪と出会って欲しい(願望)。
「おまえ、まいご?」
「まいご……じゃない……。とうさんが見つからないだけで……」
「それ、まいごって言うんだぞ! はー、仕方ないから、おにーさんが一緒に探してやる」
とかなんとか、むふーって胸張ってお兄さんぶる芦雪くん、藤仁の手をさっと取って「ほら、いこう!」って一緒に綾信を探してくれる。
「きみはどうして一人でいるの? きみもまいご?」
「おれはまいごじゃない。父さんと母さんがまいごでさ! あの朝顔の絵見てるうちにいなくなっちゃって。おれが見つけてやんないといけないんだ」
それを迷子と言うのでは、と内心思うと同時に、きらきらと硝子玉のように輝く瞳と少女にも似た愛らしい笑顔に藤仁少年の初恋メモリー始まって欲しい畳む

#天涯if