MEMO

はしがき
タイトル通りというか、「我も日々のご褒美にクリスマスプレゼント欲しい! サンタさん来て欲しい! でも来ないから自分でクリスマスプレゼント作っちゃお!」という欲望から始まった自作自演クリスマスプレゼントの話です。
もっと端的に言うと、「拙作『天涯比隣』のブックケースを自分のクリスマスプレゼントとして作った話」。初めからそう言え。
某錬金術師のようにサンタさんを人体錬成したわけではない。
水35L、炭素20kg、アンモニア4Lエトセトラを用意したり真理の扉への等価交換として肉体の一部を差し出したりはまだしてないです。
今回も例に倣って、ブックケースの装画への感想でしたり、制作過程の感想をつらつらと綴っていきます。
長いので、興味のある部分があればそこだけご覧下さい。
ことの発端
──ブックケースを作りたい。
そんなぼんやりとした欲望が芽生えたのは、拙作「天涯比隣2」の制作スケジュールを考え始めた去年の12月頃のこと。
1&2巻でちょうど物語の半分が終わったことになるし、こう、記念に上巻としてまとめられるブックケース……欲しいな……欲しくない……????
そんな自問自答をしながら、いやいやまだ早いかも、でも見積もりとってから考えても……と、天涯の装画を担当して下さっている深海さまに2巻装画とともにブックケース装画の見積もりも依頼し、概算がついたところで考え込み、考えすぎて大の字になり、結果一度寝かせることに。
ところが、今年の9月末頃。ちょうど「天涯比隣2」の頒布が終わった頃のことです。
なにやら、仕事の様子がおかしくなり始める。
この時期は毎年繁忙期とはいえ、去年の比ではないぐらいに何故か忙しい。あとなんか身体が追いつかない。
これが……老い……!?!?!
何かご褒美がないと頑張れない……年末まで生き延びられる気がしない……ッ!
そうか、ご褒美……ご褒美と言えばあと少しでクリスマスだな……プレゼント……天涯関係……ブックケース……?
自分へのクリスマスプレゼントにブックケース作れば良いのでは!?!?!?(※天才)
そんな短絡的な思考のもと、「えーん自分用のブックケース欲しいよォ!!!!!!」と深海さまに泣きつき、深海さまのご慈悲によりブックケース装画の依頼をご快諾頂きました。感謝ッッッ!!!!!!!
装画に含まれた意味
やってまいりました! 深遠なる深海さまのご解釈を紐解く百合が大好きな時間!
紐解く前の前提の話なんですが、実は今回描いて頂いた装画、もともと天涯1巻の装画になるかもしれなかったものです。
そう、天涯1巻の装画作成時にいくつか出していただいたラフのひとつだったんですね~。
このラフがもう良くて良くて……。藤仁と芦雪が陰陽のように上下の位置にいて顔を近づけて身を寄せあってる構図なんて……全オタク大好きなやつジャン!のきもち。
で、そのラフが忘れられずどうしても完成したものが見たくて、今回ブックケースとして再起用させて頂いたという経緯があります。
さて、ここから本題。まずはブックケースの装画をご覧頂きたい……。

エッッッ……聖母子図??????? 泡が浮かんでは消える水中のような、はたまた星々が瞬く天空のような不思議な空間。 ここに配置することで、水仙と藤、さらに対角の千歳緑の髪紐などを合わせまして、顔回りに円形の構図ができあがります。
いのちたすかる~~~ありがてえ~~~!!!!!! これはですね、もうね、おたく大好きな現象ですよね! そう! いや……あの……あの……。 藤芦さんの髪紐・リボンは、それぞれの左手薬指へ触れるようにしております……。 性癖ハンマーをまともに喰らった百合、地面に叩きつけられたあと、辺りに飛び散った血で「深海さま」と血文字を綴りながらそのまま死んでしまいました。𝑯𝑨𝑷𝑷𝒀 𝑬𝑵𝑫__。
何回見ても初見のきもちで狂えてしまうこの美しい藤芦。
言葉がなくとも伝わるほどの、藤仁の慈愛にあふれた眼差し。彫りの深い首元に加え、千歳緑のリボンに触れる指はすらりと長く骨の線が美しい。
そんな藤仁をそっと引き寄せる芦雪の肌は雪のように白くなめらかで、瞳を縁取るまつげは厚い。小人だったらここでひと休みしてほっぺですべり台しちゃう……。
水の流れに広がり揺れる髪は、ひと束ひと束が絹糸のように艶やかで……。
何より、二人を包み円を描くように浮かぶ藤の花びらと水仙の写実性がまた、この絵と現実世界とを繋ぐよう……!
ハァハァ……美味しい……全てが……ッッッ!!!!!! 無理……胸が苦しい……!!!!!!
深海さまからご進捗のご報告をいただく折にも、気持ちの悪い怪文書は毎回送らせていただいていたのですが(やめなさい)、今読み返しても大体頭おかしいこと言ってるうえに何故か深海さまや名も無き第三者に助けを求めている……怖すぎ……。
「助かる~~助けて~~助かりたい~~」て鳴き声みたいに言ってる……いや今もなんですけど……。
ご覧の通り、百合が狂ってる理由や注目ポイントは、もうここで語りきれないほどあるんですが、絶対に見て頂きたいのは下記3つです。
長文説明は読まなくても良いので、下記ポイントだけおさえてもう一度冒頭の装画を見てください!!!!!!
人類頼みました!!!!!!
藤仁と芦雪がいる場所
これは、深海さま曰く「天と地が混ざり合い混在してゆくような雰囲気」をイメージされたとのこと。
天地は「天涯比隣」という作品タイトルを表し、また決して交わらない藤仁と芦雪そのもののようでもあります。
装画の二人は、幸せそうに見つめあっているものの、その場所は人が到底生きていけない水中もしくは天空であり、二人が社会的に迎合されない関係ないしはしがらみの中でお互いだけを見つめて生きていることを示している……。
つまり……これは……藤仁と芦雪の閉塞的で共依存的な関係性の暗喩でもあり、メリバの暗喩でもあるってこと!!!!!! なんてこった!!!!!!
さらに、この閉ざされた二人だけの空間に舞う藤の花びらと水仙の配置にも仕掛けが施されているとのことで……。
以下、深海さまから頂いた配置解説になります。お目通しのうえ私とともに爆裂四散してください(恐怖)。
目線誘導を兼ねつつ、いまこの瞬間だけは、2人だけの世界、のようなイメージです。
もう全ての要素に意味があるんですこの藤芦装画!!!!!!
一切無駄がなくそれでいて洗練されており調和すらもとれている完璧な世界ってわけ!
労働で濁りきったソウルジェムが円環の理に導かれてしまう~~! わけがわからないよ!
とにもかくにも、深海さまの装画の前では百合のいのちは救われているようであっていくらあっても足りないし、このひとつめのポイント解説の時点で残機は0ですだれかたすけて。
瞳とまつげにお互いのカラーの映りこみ
「二人ともお互いのことしか見えてない/見てない」「映りこむほどの距離の近さ」を示す神々が仕立てたもうた尊き表現方法!
百合は妖怪なので装画を隅々まで拡大しては「はぁ~~~藤仁の均整のとれたこの腕の筋肉は宇宙~~~芦雪くんの髪の広がりもはや銀河~~~」と妄言とともに吸いまくってたんですが、その時にこの表現をたまたま発見してしまい、文字通り息が止まりましたし、驚きすぎて座った姿勢のまま椅子からジャンプしてました(!?)
こういうの……大好きなんですけど!?!?!?
この表現があることで、ひとつめのポイントとあわせて、装画の藤芦の関係が「閉塞的」であることをより深めている! なんて深甚とした解釈とお気遣い……!
深海さまを国の至宝として国で保護して欲しい頼む!!!!!!
左手の薬指に絡むお互いの髪紐
これほんと……あの……「左手の薬指」はもうダメです!!!!!! それ、あれです!!!!!!(?)
しかもお互いの象徴ともされ本編上では交換し合い身につけ合う(厳密にはやや違う)ほど大切にしている髪紐を! 左手の薬指に絡ませるだと!?!?!?しかも敢えて結ばれてない!?!?!?
そんなの……全オタク大好き結婚のメタファーじゃん!!!!!!
ご進捗を頂いた折、当然ながらに深海さまに助けを求めたのですけれど、深海さまはただ、穏やかに微笑まれるだけで……。
深海さまは悶え苦しむ百合に笑顔のまま性癖ハンマーを大きく振り上げ、以下のお言葉を振り下ろされました。
《中略》
お二人はお互いに強く想い求めているものの、1~2巻ではお互いに生涯の約束・契り等を交わしていらっしゃらないようなので“触れる”でございます。
本当はもっと高画質で隅々まで拡大して見て頂きたいんです……。
藤仁の髪紐の描き込みであったり、芦雪の唇下にあるほくろや髪の広がりだったり……。
昨今の事情を鑑みて、このような形を取らざるを得ないのが本当にッ! つらいッ! 悔しいッ!
ここまで真摯に天涯に向き合って描いて下さった深海さまの素晴らしさと技術をあまねく民にもっと詳細に見て欲しい!!!!!!
でも深海さまの絵やその権利を侵害/蔑ろにされる方が嫌ッ!!!!!!
そんなこんなで、全てを詳らかにお見せできないのが大変悔しいなと思う百合でした。
国は税金上げるより先に生成AI関連の法整備してくれ~~。
ブックケースのデザインについて
これは以前ブルスカでも呟きましたが、今回のブックケースのテーマは、ずばり「芦雪(=雪)」です。
ブックケースに収納する1&2巻は、「芦雪」を通して見るまだ見ぬ世界と藤仁をメインに展開していくため、雪モチーフや雪にまつわる色を使用することは、当初より決めていました。
ゆえに、ブックケースに使用した紙がミランダスノーホワイトになるのも自然な流れだったわけです。
雪合わせ仕様、ここに完成……。自己満は計画的に。
ただ、1&2巻装画の色味を踏まえ全体のバランスを考えると、背景色は青系統の色になることはほぼ確定です。
「雪色 は白系統だから無理だな~~。他に何か雪に関連するような色ないかな~~どうすっかな~~」と雪関連について思考をめぐらせていたとき、不意に浮かんでピン!ときたのが、ある一枚の絵。
それが、浮世絵師・喜多川歌麿の雪月花三部作のひとつ、「深川の雪」でした。
本ブックケースの色味は、その雲の色から頂戴しています。
「深川の雪」の雲の色から色を頂戴するのであれば、せっかくなら他の「深川の雪」要素も入れたい……で装飾が「エ霞(雲)に雪輪」でトントン拍子で決まったというアレ。単純すぎる。
タイトルの円窓は「天涯の世界を窓から覗きこむ」という意味合いを、それを彩る月と雪は「藤仁と芦雪」を表しています。
なので、この「窓」を表す装飾類は装画とは別物であるという意味を持たせるためにも、エンボスニス加工を施しました。
これがめっっっっちゃ良い。ぷっくりつやつやで触って気持ちが良いし、何より見た目が華やか!
箔押しと悩みましたが、今思えばエンボスニス加工で良かったなと思います! おすすめ!
また、以下は余談ですが、当初は表1の面に藤芦装画を配置する予定でした。
おっきい画面かつ初手でうつくし藤芦を見てもらいたかったので。
ところが、デザインを組み終えるという時に、ふとある考えが過ぎる。
──せっかくなら、本を取り出した時に見える1&2巻装画でも脳破壊したくない?
つまり、表1にはブックケース装画を置くのではなく、あえて簡素なタイトルデザインを施す。
そのシンプルさは、かえって本を取り出す前のわくわく感を煽れるし、取り出した時には本の装画がより鮮やかに映える……。
これなら、「エッッッうるわし藤芦過ぎ!?!?」現象を……起こせるんじゃない……!?!?
これぞまさに、表地よりも裏地や襦袢などの見えない部分にこだわりやおしゃれを施すことでより粋になる、「裏勝り」効果では……!?!?
そんで、藤芦の背中や朝顔が映る比較的簡素な裏表紙を守るように、ブックケースの表4には今回のうるわし装画を載せた方が……物語を読み終えたあとの脳と情緒を粉砕骨折できるのでは……!?
ブラボーブラボー!!!!!! サンキュー江戸の美学!!!!!!
自画自賛でスタオベをきめる百合。なんてこった……前門の美麗藤芦、後門の最高藤芦が完成してしまった……。
そんなひとり遊び劇場を繰り広げつつ、今回のブックケースはできたというお話でした。
なお、印刷所さまが本来の納品日よりも2日早く送ってくださったこともあり、当初の目論見通り12/25の朝に届きました……!
完璧で究極の自作自演クリスマスプレゼント、ここに完成である!
私にもサンタさん来た! わーい!
大人の財力で成せたパワープレイ!
ありがとう深海さま! ありがとう印刷所さま! ありがとう百合!
次回は天涯短編集を出すので、今度は短編集装画に狂う日々が始まると思います。
とりあえず、また妖怪が狂ってるな~ぐらいの目で見ていただけますと幸いです。
以上、大人にはサンタさんが来ないので錬成した話でした! ここまでご覧頂きありがとうございます!
何かございましたら、お気軽にWaveboxまで!