MENU

MEMO

深海さまの装画が良すぎて目玉なくした話

はしがき

あらすじタイトル通りの話です。
8/23(金)にX(Twitter)にも投稿しましたが、拙作「天涯比隣」の第2巻を来月9月に発行することと相成りました。
こちらは、9/23(月・祝)開催のJ庭にて頒布予定です(通販で先行頒布も行います)。
今回つらつらと書き綴っていくのは、その装画についてになります。

今年の9/19で、なんと天涯も2周年……。
おかしい……ちょっと前まで「1周年だわーい!」とか「おれ、もう製本童貞じゃない……!」とか無邪気に喜んでたのに……。
あの日からもう365日が経とうとしている……? 嘘でしょ……?
社会人になると時の流れが無常というかなんというか、ここ数年、百合の時空だけ歪んでいる気がします。

閑話休題。そろそろ目玉をなくした話をしようと思います。
例にならって要点もそんなにない、おたくの怪文書が以下から続くため、もし気になる項目があればそれのみご覧下さい。
気になる項目がなければ、何も言わず深海さまのXforioのみご覧いただければと思います!!!!!!!!
頼みましたよ!!!!!!

深海さまと百合と「天涯比隣」

X(Twitter)、てがろぐ、BlueSkyなど、至るところで百合が神のごとく崇め奉り、不遜にもその名を口にする「深海さま」というお名前、多分フォロワー各位1回は目にしたことがあると思います。
当方は好きになったものに対してはとことんしつこいので、堰を切ったように敬愛する方のお名前を連呼することがあります。 鳴き声の如く深海さまのお名前を呼んでいるのは、そういう仕様によるものです。(?)
そもそもの発端は、共通の好きフォロワーが深海さまを布教してくださったことにより百合が認知、その流れるような繊細な筆致と掲げられた絵のテーマに惚れ惚れした結果、深海沼(!?)に音もなく落ちたところから始まりました。
以後、怖がらせないようひっそりと動向を追っていたところ、とある別の好きフォロワーの「百合さんは天涯を本にしないんですか?」の一言が天啓だったのか何なのか、百合はその1週間後に思い切って深海さまに装画の依頼をしたというとち狂った経緯があります。

天涯とは、拙作「天涯比隣」という江戸時代中期~後期あたりの絵師たちをモデルにした創作BLの名前で、その形態は小説のような文の集合体です。
「創作BLの表紙って依頼してもいいのかな……? センシティブな内容だし、趣味の依頼だけど大丈夫かな……」と不安になりながら、メモ帳に何度も依頼文を書き直したことを今でもよく思い出しますし、よく覚えています。
そんな中、深海さまは快く依頼を引き受けてくださっただけでなく、当時24万字弱あったWeb版の天涯本編を1ヶ月ほどでお目通しくださったうえにご感想まで下さり、その行動力と過分なお気遣いが百合には衝撃的で、「か、神……」としか当時言えませんでした……。
あの夏の日も、もう1年前の出来事であるという事実に今追加で衝撃を受けています。

そんなこんなで、深海さまとやり取りを重ねるうちに、「天涯をシリーズとして物理本にし続けるなら、装画は全部深海さまにお願いしたいなぁ……」と思うようになったため、1巻に続き今回の2巻装画も依頼させて頂きました。



「天涯比隣2」の主題

一応、拙作「天涯比隣」には大きなテーマがあるのですが、物理本にする時にもわかりやすい中テーマを設けて編集、コピーの作成をおこなっています。
中テーマといっても、物語の主軸となる藤仁と芦雪の関係性の変化を反映させているだけなので、大それたものではありません。

1巻のテーマは「依存」と「暗鬱」。
2巻のテーマは「希望」と「解放」。

コピーも各々、
「この想いが、依存(つみ)だとしても。」
「願ったのは、君とともに生きること。」
と、テーマをなんとなく想起できる言葉で構成しています。

1巻は、藤仁と芦雪の関係が始まると同時に、想いが上手く噛み合わずどんどん深みにはまっていく話がメインになるため、1巻の装画はとにかく「暗鬱」の優先度を上げて頂き、藤仁と芦雪が指を絡ませ合い、ともに堕ちていく様子を幻想的に仕上げて頂きました。

一方、2巻ではこれまで抑圧されてきた想いが「解放」され、二人が未来に「希望」を持ち始める話が主題です。
「この振り幅、1巻から一貫性なくてめちゃくちゃ申し訳ないな……。1巻から一貫性……フフ……韻踏んでておもろ……。そんなことよりすんごい言語化しづらいこの関係性、どんな言葉で当てはめれば……?」と悶々としつつ事前資料にどうにかこうにかテーマを盛り込み、「できればテーマの象徴となるこのシーンかこのシーンを抽出頂けたら嬉しいです」などという不遜すぎる言葉とともに恐る恐る深海さまに提出。
深海さまの大地よりも広く海よりも深いご慈悲により、本依頼も1巻の時と同様にご快諾頂き、また双方の認識のすり合わせとして、丁寧なヒアリングをご実施頂いた後、無事2巻装画が着手される運びとなりました。

改めて、1巻・2巻のテーマを鑑みたうえで装画を拝見すると、それらが余すことなく盛り込まれていることがひと目でわかりますし、SNS上で頂いた装画への各所の反応を見ていても、受け取り手が想起する印象は、こちらが決めたテーマに即したものが多かったです。さすがすぎる……。

抽象的なテーマを絵に反映させる、ないしはひとつの絵で複数の人間に共通の認識を持たせるというのは大変難しいことなのですが、深海さまは物事を俯瞰する力でしたり、要素の分析、分析したものを再構築して絵として表現する力が突出されている稀有なイラストレーターさまなので、かような人間離れした装画を生み出せるのだろうなぁと百合は常々大の字になりながら考え、今日も岡山方面に向けて五体投地しています。



藤仁と芦雪の関係を示すもの

前項のテーマを踏まえた上で、深海さまが納品してくださった今回の装画がこちらです。

露に濡れた、目の覚めるような青い朝顔が薄藍の月光のもと浮かび、またその月光は藤仁と芦雪の他愛もないやり取りをも優しく照らしている……。
背景の縁側、障子、ひいては柱までもに細かな木目が書き込まれ、まるで1枚の写真のように写実的。
これらは、藤仁と芦雪のやり取りにある種の説得性、実在性を与え、それによって「現実世界と天涯世界」があたかも地続きであるかのような錯覚さえも鑑賞者に付与する……。
そうでしょう人類、わかるでしょう人類、この装画の素晴らしさがひと目で!!!!!!
何より藤仁の腕や足、脇からちらりと覗く均整の整った筋肉!
それと対照的なまでに細い芦雪の手首足首そして腰!
ふたりの性格を反映させた笑い方の違い!

はーーーー!!!!! 酒と米が美味え!!!!!!

ラフと下塗りをご共有頂いた時点で上記が既に反映されていて、百合の目ん玉消失しちゃった。
ナートゥをご存知でなく天涯や藤芦をご存知でないあまねく民にも二人の性格/体格の違いがひと目でわかるこの巧さ! 麗しさ! うつくしさ!
この圧倒的"""美と画力"""で殴られた者たち、ようこそ深海沼へ……あなた方を心より歓迎します……まずは握手しましょう……。
ちなみに、入稿作業追い込みと己を鼓舞するという意味で、納品された日にこちらの装画をスマホの待ち受けにさせて頂いた結果、興奮しすぎて寝れなくなりました。

冗談はさておき、ぱっと見ただけで““““巧い””””ことが誰にでもわかるこちらの装画、実は深海さまが細やかに仕掛けてくださった、藤仁と芦雪の関係性を示す小ネタが複数隠れています。
それが、下記3つ。
長文説明は読まなくて良いので、下記ポイントだけおさえたらすぐに冒頭の装画までバックしてください頼みました!

藤仁と芦雪の髪紐の色

そもそもこちらの装画は、天涯2巻に収録している話の一部分を描き起こして頂いたものになります。
その前後の話の中で、藤仁は大切にしていた自身の今紫の髪紐を芦雪に、そして芦雪は「藤仁との関係が長く続くように」と願を掛けた千歳緑の髪紐を藤仁に渡し、各々交換する形で互いの髪を結い合うのですが、それが!!! この絵に!!! 反映されている!!! なんでッッッ!!!!!!!と顔の緩みが止まらなくなる百合。
食い入るようにふたりを見つめ、もはや内側に巻き込む唇がなくなるほどに唇を噛み締めてしまいました。

二人の間に置かれた徳利とおちょこ

深海さまの恐ろしさは髪紐だけに留まりません。
藤仁と芦雪、ふたりの間に置かれた徳利とおちょこ。目を凝らして見ると、徳利の表面には藤と水仙の模様が施されている。
藤と水仙、それは作中でも頻出する藤仁と芦雪を各々象徴するものです。それが……徳利に……!?
加えて、芦雪が使っているおちょこの表面には藤、反対に藤仁が使っているおちょこには水仙が。
これは……つまり……互いが互いを象徴するものを使用して酒を……飲んでいる……!?!?!?!
そんなの……そんなの……おたく大好きですけど!?!?!?
ちなみに、深海さまの備考メモがこちら。

「徳利とお盆」は、それまで二人の間に空いていた複雑な距離感を示しています。
《中略》
お二人がそれぞれこの場にいる理由としてつけたある種のつながりでありながらも、同時に見えない壁のように感じましたので、これはぜひ入れねばと思いました。
「月がなくとも」の一文のように、この「徳利とお盆」を超えて触れ合うことは、関係性や心情の変化を象徴できるのでは、と思っております。


こんな小さなアイテムに、そこまで裏の想いを込めてくださるイラストレーターさま他におるか?????
千枚通しで自分の太ももぶっ刺しながら見ないと正気を保っていられない。
それほどに危険な装画です。これまで流血沙汰にならなかったのが奇跡なのかもしれません。

目の覚めるような青い朝顔

これまでのポイントで性癖クリティカルヒットを受けてもなお、平静を装おうと顔の前で指を組み碇ゲンドウのポーズをとる百合。
しかし、その努力も虚しく「もう……無理……しんどい……」以外の言葉が出てこない。なんてこった。
百合が天を仰ごうと、深海さまの進撃はまだ続きます。
装画の右端に植わった、目の覚めるような青い朝顔。
こちらは、今回天涯2巻の書き下ろしとして収録した短編内容を反映して頂いたものになります。
短編の中で朝顔は、藤仁と芦雪の依存関係、ないしは二人を繋ぐものとして描いている一方、こちらの装画では夜に2輪のみ狂い咲かせることで、「現状の依存関係が好転することは『ありえない』と各々諦めている」様子を示しています(朝顔が夜咲くことはありえないので)。
ただ、「狂い咲き」という画題は、江戸時代後期頃には「苦境、老境からの再生」を示す吉祥として捉えられていたこともあるため、見方によっては藤仁と芦雪の関係が好転する美しき兆しでもある……ある!? あるかも!!!!
全てかもしれない構文でお送りしています。
朝顔と狂い咲きに関しては、僭越ながら当方の要望を反映して頂いたものになるものの、百合の想像を超えた流麗な筆致で返球が来たゆえ、受身を取ることもままならず、百合は即死してしまいました。


そんなこんなで、深海さまのこれまで積み上げられてきた技術、拙作の世界に寄り添うようなお気遣い、深遠なる解釈、様々な隠し要素により、今回の天涯2巻装画はできているというお話でした。

【総括】深海さまはいいぞ!!!!!!!!!!!!

余談ですが、深海さまのご分体であらせられる寺谷さんの動向もひっそり追わせていただいており……!
労働で頭がおかしくなったせいか、藤芦コミックスの制作をSkebにて寺谷さんに依頼するという暴挙に出ました。

今見返しても、コミックス版の藤芦ほんと可愛いな……。
まずもって出だしで艶やかな髪を指ですくうその仕草がえっっっっっちだし線画は流れるように美・美・美だし空気を含んでなびく二人の豊かな髪が美しすぎて「美」文字でモールス信号打ててしまう。
芦雪はおめめきゅるんきゅるんで可愛いが臨界点突破してるし、ほんとこんな顔面でデートに誘われたら行くしかないでしょ……。
選択肢は「行く」「すぐ行く」「毎日行く」だね、藤仁!!!!!!!
はぁ……。惚れ惚れしちゃう……。「続きは!?!?!」ってなる絶妙なところで終わらせてくださってるその構成も最高……。
良すぎやん……ええやん……エエ・ヤーン(19XX - 2024)……。

【追記】寺谷さんはいいぞ!!!!!!!!!!!!

ちなみに、本記事を作成するうえで装画と藤芦コミックスを再びまじまじと拝見していたため、意図せず2代目の目玉も消失してしまい、現在は3代目の目玉を使用して記事をアップしています。
みんな! 目玉は大事にしろよな!

以上、深海さまの装画感想と解説でした! ここまでご覧頂きありがとうございます!
何かございましたら、お気軽にWaveboxまで!

関連記事