Afterword

番外編「春は遠けき」

【あらすじ】
春ももうすぐ訪れるという晩冬のある日。湯屋帰りに芦雪が藤仁へと頼んできたのは、「今日だけ共寝をしてほしい」というもので……?

本話は藤仁目線の番外編です。芦雪誕記念のSSになります。
今回は以下目次で解説のような書き散らしをお届け。
※クリックするとその内容に飛べます。

本編と本話の位置づけ

本話は、藤仁と芦雪が恋仲になったあとの話として書いてます。季節は今と同じ年明けの1/14想定です。
あったかもしれないしなかったかもしれない、彼らの穏やかで特別な日常のひとつ。
番外編はその名の通り本編外の話なので、藤仁目線で話が進みます。
天涯の本編においては、基本的に芦雪の目線で進行していきますが、幕間や番外編は芦雪以外の人物の視点から語られる仕様になっています。

藤仁が「未来の約束」を恐れる理由

藤仁は芦雪とともに過ごすようになってから、未来に希望を見るようになりました。しかし、希望を望むには未だ恐怖が残り、未来を夢に見ることしかできない状態です。
藤仁が未来に恐怖しているのは、彼のこれまでの過去に起因しています。藤仁と未来の約束をした人は、みんな藤仁を置いていなくなってしまったという過去。
ゆえに彼は再会を望む天涯比隣の約束を嫌っており、第二十二筆「巡逢」にて芦雪に天涯比隣の約束を持ちかけられた際も拒絶しました。芦雪とはこれからも未来の約束を絶対にしないし、したくないと思っている。芦雪を喪いたくないので。
なお、今後の本編ではたった1度だけ、芦雪と天涯比隣の約束をすることになります。

藤仁の「春」とは

藤仁にとっての「春」とは、「自身にとっての幸せ」を指しています。
それは芦雪であったり、家族であったり、思わず描いてしまうほどの幸せに満ちた未来であったり。彼が言い表す「春」の意味はひとつに留まりません。
今回のタイトル「春は遠けき」とは、望みたいのにもかかわらず、未来の約束をどうしようもなく忌避してしまう藤仁の心を表しています。少し分かりづらかったかもしれませんが、個人的には気に入っています。

以上、解説のような書き散らしでした。
ここまでご覧頂きありがとうございます!