Afterword

先生! 表紙依頼の資料ってどうやって作れば良いですか!?!?!

かつての百合の心の叫びが記事タイトルになりました。

今回は、同人活動してる創作者さまの中でも「イラストレーターさまやデザイナーさまに表紙依頼したいけど、どんな資料用意すれば良いかわからーーん!!!!!」の方向け記事になります。
というのも、直近フォロワーさんやメッセージボックスなどで質問されることがちょこちょこあり……。
当方の力が少しでも誰かの役に立つなら、と思い立ち、拙作「天涯比隣」の装画を担当してくださっている深海 怜さまご協力のもと、個人サイトにて本記事を公開いたしました。

いつも通り前置き長くなりましたが、以下から依頼資料づくりについてだらだら書いていきます。全て読んでいただく必要はないと思うので、気になる項目があればそこだけご覧ください。

依頼資料の位置づけ

そもそも、依頼資料って何のために必要なんですか問題。
イラストレーターさまやデザイナーさまによって依頼の仕方も打ち合わせの仕方も異なるので、資料のいる/いらないも分かれると思います。ゆえに、資料作る必要ある……?で悩まれる方も多いかと。
結論から言うと、

依頼資料は「依頼者と受注側の認識のすり合わせのため」に必要なので、なるべく作りましょう!!!!

です!
また、依頼項目をイラストレーターさま側に伝えるだけなら、メッセージツールとかのテキストベースでも良いんですが、それだと下記問題点があります。

・依頼内容を再度確認する際に、過去のメッセージをいちいち遡る必要がある。
・特定の項目だけを確認したいのに、それを探すのに時間がかかる。
・情報が後出しで追加された場合、メッセージツール上ではどれが最新の情報なのかわからなくなる。

こういった細かな面で困ることもあり、これらが原因で認識に齟齬が生まれて、コミュニケーションエラーが発生することもあります。
明確な要望があるなら、先に資料として落とし込み、依頼の大枠や要点だけでもあらかじめまとめて提示しておくことで、そういったトラブルを未然に防止できます。
またこれは蛇足ですが、依頼資料を作る場合は、依頼資料を送付したあとに音声通話でのお打ち合わせもできるとベストです。
音声通話でのお打ち合わせは、依頼資料全てを説明するのではなく、資料で説明できなかった補足事項をイラストレーターさまにお伝えしましょう。
音声通話で補足することで、テキストでは伝わりづらかった部分が伝わりやすかったり、温度感が分かったりします。

依頼資料で必要な項目

さて、依頼資料はまぁまぁな確度で作らなければならないとわかったところで、早速作り方を説明……といきたいのですが、その前に「依頼資料では何を書くべきか」を先に考えていきましょう。
イラスト制作の例で恐縮ですが、いきなり線画から始めるひとはいない……と思いたい……。
アイデア出しのためのラフや下描き、もしくは下塗りから始めるはず……。依頼資料に書く項目を先に考えるのも、それと一緒です。小説で言えばプロットみたいな。
ここさえ考えてしまえば、あとはもうこっちのもんですよ!!!!(ほんまか?)

依頼資料に必要な項目……前項でも記しました通り、やはりこれも依頼するイラストレーターさまによってマスト項目は変わってきますが、下記のうち★がついてるものを押さえておけば、あらかた網羅できると思います。

・イラスト制作の目的★
・イラストジャンル★
・納品日★
・イラストのサイズ、納品形式★
・キャラ概要★
・構図や雰囲気のイメージ
・印刷所(物理で何か作る場合)
・進行スケジュール表
・質問事項★

ほとんどじゃねーーーーか!!!!! ぶっ飛ばすぞ!!!!!!
ほかにも、深海さまのご分体であらせられる寺谷さんが以前投稿されておりました概要項目も大変わかりやすいので、ご参考までに!
ツリーに続いてご説明されておりますので、下記寺谷さんの投稿はツリー全て閲覧することをおすすめします。


資料の必要項目が分かったところで、「じゃあ、これを真似すればええんやな!」では意味がないので、何故この項目が必要なのかも下記に綴っていきます。
項目の提示意図を理解していれば、イラストレーターさま側から何かしら質問が来たとて、曖昧な返答にはならないかと思います。
人間と人間のコミュニケーションエラーやトラブル、それは「認識の曖昧さ」と「双方の認識齟齬」によって大体起こりますので、未然にこれらは潰しましょう。
ついでに日頃の労働中に起こるコミュニケーションエラーも、大体事前に実施背景や指示意図を理解しておけば、エラー回避できます。
さらにさらに労働時にテキストで「この認識であってますよね??」「おん、そうやで」のエビデンスも残しとけば、たとえ上司であろうとクライアントであろうとエビデンスバトルで勝てます。
これが、ぼくのかんがえたさいきょうのエビデンスカード!!!!! ターンエンド!!!!!(は?)

話が逸れましたが、資料項目の理由なんて言われずとも知ってる! 既に分かってる! という方は、次の節まで飛ばしてください。

イラスト制作の目的
ここは、「小説の表紙にしたくて」でも「ポスターを作りたくて」でも「部屋に飾って個人で楽しむためのものが欲しくて」でも「グッズを作りたくて」でもなんでも良いです。己の欲望を簡潔に書いてください。
制作目的って伝えるの必要かい?と思ったあなた、そういうものほど必要なんです実は。
この制作目的は制作サイズにも関わりますが、何より制作背景が分からなければ何を「訴求」にして「何に気をつけて」制作すれば良いかが分からず、イラストレーターさまの思考が路頭に迷う可能性があります。
例えば、「装画やポスターが作りたい」とします。装画やポスターって、絵の他に何と組み合わせて作られてるでしょう?
そう、文字!!!!! 本のタイトルとかさ、キャッチコピーとか!!!!! 帯とか!!!!! あるやん、大事な要素がさ!!!!!!
これを前もって話しておくと、イラストレーターさまの思考は「これから描く絵には、何らかの文字が乗ること、それによって絵の一部分の情報が隠れてしまうことを想定した構成にしなければならない」になるわけです。
つまり、「タイトルやキャッチコピーが配置されそうな場所には、大事な情報(キャラの顔とか)は描かないようにしよう」などの配慮がしやすくなる。
皆、多分書くと思うけど忘れんといてな!!!意外と大事やで!!!!

イラストジャンル
男女の恋愛ものなのか、はたまたBLなのか、恋愛など絡まぬファンタジーものなのか、現代ものなのか、センシティブなR18-Gものなのかバディものなのか、そもそも立ち絵描いて欲しい案件なのか等。
ジャンルによって「これは描けないよ~」ってあらかじめ提示されてるイラストレーターさまもいらっしゃるので、ここは受注可否に関わるという意味でも軸になる部分という意味でも、しっかり明記しておきましょう。

納品日
期日がいかに重要か……創作者なら分かるよな、人類……。
そう……おれたちがもっとも恐れる「入稿日」に……関わってくるからだッッッッ!!!!!!
納品のケツはあらかじめ入稿日から逆算して決めておけ!!!!!
ちなみに、入稿日ギリギリのイラスト納品設定はおすすめしません。
イラストレーターさまに何かあった時やスケジュールに遅延が出た場合、リカバリーが効かないので。
早くて入稿日から1ヶ月前納品日、遅くとも1週間前納品で設定しておこうな。じゃないと死ぬからな。未来の自分が。

イラストのサイズ
形式サイズを書く理由ですが、制作物によって違いがありますからね。これはね、分かりやすいね。
ポスターと文庫本サイズの装画って印刷物になった時にサイズ違うやん、それ相応のサイズに合わせてね、イラストって書く必要があるからね。
形式については、「png/jpg/psd」のいずれかのデータ書き出し形式と「RGB/CMYK」のいずれかの色形式を書きましょう。
これ、何が重要かっていうと、画面で見た時のイラストと、印刷した時のイラストは色が若干違って見えることありますでしょ。これに関わってきます。
この原因はいわゆる色の表現方法の違いなんだけど、簡単に言えば「RGBはデジタル用の鮮やかな見え方、CMYKは印刷用のややくすんだ見え方」です。雑。
ここはね、有名な印刷所さんが解説してくれてるので、もっと知りたい方はここで見てみてね。

んで、基本印刷所さんで対応してる色形式は「CMYK」です。RGB対応してくれるとこもあるけども。
印刷物作る場合は、イラストレーターさまには「CMYK」を指定しておいた方が良いです。のちのち印刷したあとに「見え方が違う……」ってなりにくいので。
「CMYK」の場合、書き出し形式は「jpgもしくはpsd」になります。「RGB」の書き出し形式は「png」です。
各々、印刷所の対応可能形式を確認した上で決めましょう。
ちなみに、百合はネット掲載用(RGB/png形式)と印刷用(CMYK/psd形式)での両方で納品して頂いています。
RGBとCMYKの概念と書き出し形式を分けての納品については、第1回目の納品時に深海さまの多大なお気遣いにより知りました。感謝……。

キャラ概要
既にキャラデザ決まってる場合は、立ち絵のデータとそのキャラの外見特徴と性格、生い立ちなどをテキストで記載しましょう。
ここは、キャラクターへの創作愛やこだわりをここぞとばかりにぶつけるところ。
間違えて欲しくない項目(髪色や瞳の色、長さなど)も詳細に記載しておくと安全。
装画においてはね、重要な素材になるからねこれが。

構図や雰囲気のイメージ
必須ではないんだけど、実は本項がいちばん大事故に繋がりやすいものだったりする。1個でも掛け違えたら死ぬ。
気をつけろ!! これは時限式爆弾だ!!!
なぜなら、百合がもっとも恐れ、また100回ぐらい言った「認識の齟齬」が大変起こりやすいので。
良いですか人類。これだけは声を大にして言いたい。

「こういう構図や雰囲気が良い」という明確なものがあるのなら、絶対に先に提示しておけよな!!!!!!

明確なものがなくても、頭の中に「こういうのだったら良いな~」というものでも、あるなら初めに提示してくれ!!!! おたくとの約束だ!!!!!
人間誰しも、ものを作る前には頭の中で何らかの理想像を描いているもの。それは傲慢でもないし何もおかしくないです。あたりまえ体操。
ですが、それは自身の頭の中でのお話です。
自分が理解しているからと言って、何も言わずとも、また「これくらい言えばわかるやろ!」の慢心で他者が全てを察して理解してくれるわけではありません。この考えこそ傲慢です。
例えば「緑色を思い浮かべて」と言われても、各々が浮かべる緑って微妙に違います。深い緑、薄い緑、鮮やかな緑……。
「なんでこっちの思ってることが相手に上手く伝わってないの!!!」みたいな現象は誰しも経験あるかと思いますが、これは緑色の例にもあるように、各人の経験則に依拠した認識の差によるものです。
イラストレーターさまは神ですがエスパーではないし、依頼者とは当然異なった経験をされてこれまで歩んでこられているので、依頼者のきもちや思考をぴったり読み取ることは不可能です。
なので、構図や雰囲気に理想像がある場合は、なるべく自分の描いている理想像に近い、参考となる画像やイラストを必ず1、2枚はイラストレーターさまに提供しましょう。
3枚以上でも構いません。むしろ数がある方がより多角的に考えやすかったりしますし、より認識のすり合わせがしやすかったりします。
ほかに、「イメージはないけど、装画頼みたいイラストレーターさまの○○の作品がとても素敵だったので、こういうの描いてもらいたいかも……」もあれば、イメージ参考として書いちゃってください!
百合は深海さまへの1回目の依頼時に無意識にやってたんですが、深海さまいわく「イラストを作っていくなかでの参考のひとつとなった」とのこと。
以下、深海さまの大変説得力のあるお言葉の引用となります。

 百合さまがはじめにご依頼をくださったときに私の作品「水泡の葬」を挙げてくださったのが、イラストを作っていくなかでの参考のひとつとなりました。
 と申しますのも、イラストの仕上がりや雰囲気などのイメージを伝えていただくさいに、そのイラストレーター自身の作品を挙げていただくと、とてもわかりやすく、また技術的に再現可能だからです(つまり、それなりに安定したクオリティで仕上げられます)。

イラストレーターさま側から見た時の視点! 大変ありがたい!!! たしかに!!!!とうなずきまくりの百合。みんな、是非ともこれは書こう。
まぁ総括すると、ある程度イラストが形になってきた段階で「なんか思ってたんと違う……」て曖昧な後出しするのは反則ヤゾ!!!!!ってこと。

なお、「おまかせで!」の依頼文法は、「マジで理想とかないので、とにかくイラストレーターさまの独自解釈が見たい!!!」という方向けです。
拙作「天涯比隣 1」の装画は、訴求したい雰囲気(依存、暗鬱など)は初めから決めていましたが、自分以外の天涯の世界観解釈が(とりわけ深海さまの解釈が)どうしても見たくて見たくて……。
訴求とする雰囲気はあらかじめ指定したうえで、構図は完全におまかせする暴挙に出ました(狂気)。
2巻依頼時には「本編の○○のシーンから描き起こして欲しい」と大暴走。正気か????
深海さまの神なるご対応と高すぎるリテラシーと深遠なる解釈に大感謝……!!!!!

印刷所(物理で何か作る場合)
物理本やグッズなどに制作イラストを使用する場合は、あらかじめお伝えしておきましょう。
印刷所にもよりますが、データ作成のテンプレがありますので、それを利用したうえでイラストを描いて頂いた方が、あとで大きさが合わない問題に直面することがありません。
もちろん、内容の増減による背幅が最後まで決まらないうんぬんは多少あると思いますので、これは必須ではないです。あれば依頼者もイラストレーターさまものちのち救われるやつです。おれも救われたい。

進行スケジュール表
これはなくても全然良いけど、おれはあった方が良いなって思う。
たとえばさ、半年前に打ち合わせして、今はもう納品日まで1ヶ月きったけど、打ち合わせ以降何の音沙汰もなく「ラフできたよ」の連絡もなかったらさ……不安にならんか?
おれ心配性だから不安になりやすいのと、制作ディレクション整えておかないと落ち着かない職業病者なんだ。
百合の話は置いとくとして、これの原因は双方が「入稿日」を知ってるか否かで変わりますよね。
依頼者側は「入稿日」という本当のケツがいつか分かってるから焦るんだけど、イラストレーターさま側は「入稿日」なんかこっちが言わないと知らないし、あくまで目指してるのは「納品日」だけなので……。
ゆえに、全体の進行スケジュールはテキストベースでも共有しておくと楽。お互いに決めた期日に連絡なかったら、「これどうなってますか」の後追いもしやすいからね。
テキストベースでのスケジュール共有なら、百合と深海さまを代理人として例を記載すると下記のような感じ。

【10月中】お打ち合わせ(深海さま/百合)
【11/15】ラフをご提出いただく(深海さま)
【11/16】ラフ決定、修正案をお戻し(百合)
【11/30】ラフデータで装丁の仮組み(百合)
【12/7】本データ作成後、ご納品(深海さま)
【12/7】データ確認、依頼料の入金(百合)
【12/9】仮組みを本データに差し替え後、印刷所に入稿(百合)
【12/25】本品完成

タスクを日付順に並べて、横にタスク期日とそのタスクは誰ボールなのかを記載する感じで全然OK。
複数同時進行するものがあるなら、自分の混乱防ぐためにもスプシとかにまとめた方が良いよ。
百合は、3回目の依頼から資料内で表にしてお渡ししてます。

質問事項
イラストレーターさまに何かしら質問したいことや、依頼するうえで不安に思っていること(予算感など)は、この質問事項のページでまとめて聞きましょう。
各ページで質問を書いてしまうと、イラストレーターさまでも拾いきれない場合がありますゆえ。
あと、自分が何を質問したか途中で分からなくなる可能性もある。どんぐりどこに埋めたか分からなくなって、そのうち森作っちゃうリスと一緒です。良いか、森は作ってくれるなよ!!!!!


依頼資料の作り方

さて、いよいよ資料を作っていきます。
ただ、依頼資料を作ったことがない場合は、完成形を知らなければどこを目指して走れば良いかが分からないと思うので、一旦参考として百合が毎度深海さまにお送りしている資料をここに載せておきます。
本資料は、ブックケースの依頼資料、+αで次回装画依頼の頭出し資料になります。(ラフとか予算は制作前のため伏せてます)
そのため、「希望の雰囲気・訴求・構図」のページは作成してません。
また、下線引いてある文字にはハイパーリンク埋め込んでるんですが、記事に掲載する上で資料を画像化したためにリンク先は死んでます。南無!
これはあくまでも参考なので、各々いる情報・いらない情報の取捨選択や追加判断をして作っていってくれよな!



資料作成時のポイント

資料にざっと目を通した時、なんとなーく規則性がお分かりいただけただろうか……。
前項でつらつらと書いた依頼資料の必須項目は網羅していることのほか、下記がポイントになります。

文量は削ぎ、要点のみまとめた表形式にする。全てを文章で説明しようとしないこと!
 ┗表形式であれば、イラストレーターさんが確認のために読み返すときに「どこに何の項目があった」って探しやすいから。
 ┗表内に書ききれない場合は、補足を下部などに文章化して記載する。

パワポのデザインはシンプルに。使用する色は3色まで。
 ┗ベースに2色、強調色に1色。アニメーションはなし。
 ┗パワポ内にあるテンプレ使っても良いけど、目にうるさい場合があるのでおすすめしない。スライドマスターを適宜使用で!


ざっと記載しましたが、百合の依頼資料の作り方はこんな感じです! 結構雑!
「ここの意味がよく分からん」「これはどうやれば……?」みたいな疑問ありましたら、お気軽にWaveboxにてお問い合わせください~!

以上、依頼資料の作り方講座でした!
ここまでご覧頂きありがとうございます!